AACRニュース:膵臓がんを倒すためのロードマップ

2022年4月27日

2年ぶりに、米国癌学会(AACR)の年次総会が大勢の参加者を集めて、会場にて開催されました。これは、COVID-19との戦いの進歩の証です。

4月初旬にルイジアナ州ニューオーリンズで開催されたこのイベントには、がんの研究と医学の最新の進歩を共有する一連の臨床医、科学者、その他の医療専門家、サバイバー、患者、支持者が集まりました。人口科学と予防から癌生物学、TR、臨床研究、生存とアドボカシ―まで、AACRイベントは世界中の研究機関から寄せられる最も有望な研究のいくつかを発表しています。がんと呼ばれる病気は100種類以上あり、膵臓がんの研究もよく発表されています。この記事は、膵臓がんの研究と治療に関する研究のいくつかのハイライトです。

 

🔳膵臓がんを倒すためのロードマップ

AACRの会長兼ラスガーテン財団のチーフサイエンティストであるデービッド・チューブソン博士は、膵臓がん研究の現状についての洞察を提供しました。研究者がこれからの25年で癌による死亡率を半分に減らし、公平な臨床試験デザインを加速し癌との生活体験を改善するというジョー・バイデン大統領の「キャンサー・ムーンショット計画」の目標を達成したいのであれば、重要な仕事がまだ残っていると言います。

今日、コールドスプリング・ハーバー・ラボラトリーがんセンター(ニューヨーク、コールドスプリングハーバー)の所長であるチューブソン博士によると、膵臓がんの患者の多くは、その疾患の専門家である専門医に会うことはなく、約30%の患者は癌治療を受けることがなく、5年生存率はわずか11%ですが、これは以前の5年生存率の統計からみると改善です。散発性および遺伝性の膵臓がんや、血栓や悪液質などの全身性疾患に存在する遺伝子を特定するなど、目標をより適切に達成するための改善は重要です。

膵臓がんのいわゆる「7つの致命的な特徴」、すなわち①慢性炎症、②線維形成性間質、③代謝調節不全、④早期転移、⑤阻害薬がつくれないKRAS、⑥急速な体調偏移、および⑦診断上の欠陥、についての理解も進んでいます。しかし、ムーンショットプログラムで示された課題に対応し、膵臓がんに真の違いをもたらすには、リスクの層別化を改善して予防を改善し、環境リスク、特に変異原物質と炎症誘発物質をよりよく理解し、ワクチン研究による予防だけでなく、さらに多くの治療に焦点を当てた臨床試験を実行する必要があります。

 

🔳「膵臓がん--なぜ私たちはこれほどゆっくりと動いているのか?」

かなり暗いセッションタイトルにもかかわらず、このプレゼンテーションでは、研究者が直面する課題と、それらの課題にどのように対処できるかについて討論しました。このパネルには、テキサス大学MDアンダーソンがんセンター(テキサス州ヒューストン)のシェイクアフメド膵臓がん研究センターの科学ディレクターであるアニルバン・マイトラ博士がモデレーターとして参加し、デビッドM.ルーベンスタイン膵臓がん研究センター、メモリアルスローンケタリングがんセンター(ニューヨーク)のアイリーン・オライリー博士とマイケル(トニー)ホリングスワース博士からの発表があり、ネブラスカ大学メディカルセンター(オマハ)のエプリー癌研究所のティムD.レオン教授夫妻も参加しました。

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AACR2022PROGRAMより抜粋
FO01 - Pancreas Cancer: Why Are We Moving So Slowly?
 
April 11, 2022, 5:00 PM - 6:30 PM 

5:00 PM - 5:01 PM - Moderator
Anirban Maitra. The University of Texas MD Anderson Cancer Center, Houston, TX

5:00 PM - 5:10 PM - Introduction
Anirban Maitra. The University of Texas MD Anderson Cancer Center, Houston, TX

5:10 PM - 5:25 PM - Pancreas cancer: Critical challenges and opportunities in the clinical arena
Eileen M. O'Reilly. Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York, NY

5:25 PM - 5:40 PM - Basic and translational research in pancreatic cancer: Pushing boulders up the hill
Michael A. Hollingsworth. UNMC Eppley Institute, F&P Buffett Cancer Center, Omaha, NE

5:40 PM - 6:30 PM - Panel Discussion
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セッション中に、過去20年間に膵臓がんで行われた極めて重要な臨床的および前臨床的進歩のいくつかが強調されました。臨床分野での成功例には、DNA修復やマイクロサテライト欠損がんなどの定義された分子サブセットを標的とする薬剤の利用可能性、および最近の出現した変異型KRASの阻害剤が含まれます。しかし、依然として膵臓がんは免疫療法に対して頑固に抵抗性を示したままです。その反面、最近の革新的な「プラットフォーム試験」モデルは、治療抵抗性のメカニズムの基礎をよりよく理解するための新しい薬剤の組み合わせを評価するのに役立ちます。

進歩への追加の課題には、ヒト疾患のゲノムの複雑さと不均一性を反映する前臨床モデルの利用可能性、および高度な段階の臨床試験に移行するための重要な閾値を構成するものを定義できないことが含まれています。

パネルディスカッションでは、チームサイエンスの重要性と、この病気の有意義な進歩のためには「マンハッタン計画」を実施できる多様な研究者の労働力のパイプラインを構築することの必要性などが議論されました。

🔳マルチがんの早期発見:機会と課題

ジョンズホプキンス大学(メリーランド州ボルチモア)の病理学および腫瘍学の教授であるニコラス・パパドプロス博士は、リキッドバイオプシーの利点と現在の欠点について話しました。第一に、これらの生検は安全で非侵襲的であり、広く行うことができること。課題は、血液中の物質の割合が比較的少ない、いわゆる「干し草の山の中にある針」のような腫瘍物質を血中から検出することです。おそらく腫瘍細胞の数が少ないために、ステージI期のがんを検出することは困難です。研究者は、課題に対処するためにマーカーと複数分析物アプローチの組み合わせが必要になると考えています。

DETECT研究を含む、現在のCancerSEEKデータもレビューされました。研究者は、非常に高い特異性を維持しながらリキッドバイオプシーの感度を向上させる方法、腫瘍からDNA断片を捕捉する効率を向上させる方法、および膵臓やその他の癌におけるリキッドバイオプシーの有用性を向上させるのに役立つその他の要因を検討しています。

🔳膵臓がんの早期発見:CAPS研究

ジョンズホプキンス大学の病理学教授であるマイケル・ゴギンズ博士によるCAPS研究の最新情報が提供されました。 CAPS研究(The Cancer of the Pancreas Screening Study :CAPS)は、膵臓がんスクリーニング研究の略です。これは、リスクの高い個人の膵臓がんの早期発見スクリーニングの有効性を評価し、早期発見を改善するための新しいバイオマーカーの特定を進めるために開発された継続的な研究プログラムです。また、NCIが資金提供するさまざまなコンソーシアムに捧げられた特別セッションがあり、コホートの構築と膵臓がんの早期発見のための研究の支援に取り組んでいます。

🔳膵臓がんの発生を阻止する:癌遺伝子を標的とした免疫療法

ジョンズホプキンス大学シドニーキンメル総合がんセンターの副所長であるエリザベス・ジャフィー博士は、免疫予防と臨床試験、およびワクチンが非ウイルス性がんに特に有効である可能性についてのデータを発表しました。 ジャフィー博士によると、膵臓がんは免疫予防を開発するための優れたモデルです。広範な前臨床研究に基づいて、KRAS変異を有する初期段階の個人を特定する機会があります。 ニーハ・ザイディ博士は、高リスクの個人を対象とした新しい予防試験を含む、進行中の臨床ワクチン研究の概要を説明しました。

 

🔳AIは膵臓がんの発症を予測するのに役立つかもしれません

AACR年次総会で発表された結果によると、電子健康記録から得られた連続的な健康情報を使用してトレーニングされた人工知能(AI)モデルは、3〜36か月以内に膵臓がんを発症するリスクが25倍の個人のサブセットを特定しました。この研究は、ハーバード大学(マサチューセッツ州ケンブリッジ)で博士号の候補者であるボー・ユアン氏によって発表されました。この研究の最初の著者は、コペンハーゲン大学(デンマーク)の博士号候補者であるダビデ・プラシド氏です。

AIの最近の進歩により、研究者は、放射線画像、病理学スライド、および電子健康記録を使用して、さまざまな種類の癌のリスク予測アルゴリズムを開発するようになりました。胃潰瘍、膵炎、糖尿病などの前がんの医学的診断を膵臓がんのリスク指標として使用しようとするモデルはある程度の成功を収めていますが、これらの研究者は言語処理アルゴリズムの概念を取り入れて、より正確なモデルを開発しようとしました。

研究者は、1977年から2018年の間に治療を受けた610万人の患者の記録を含む、デンマーク国立患者登録の電子健康記録を使用してAI手法をトレーニングしました。そのうち約24,000人が膵臓がんを発症していました。研究者らは、各患者からの一連の医学的診断情報を入力して、どの診断パターンが膵臓がんのリスクを最も有意に予測するかをモデルに教えました。次に、リスク評価後3〜60か月の間隔で、膵臓がんの発生を予測するAIツールの機能をテストしました。偽陽性を最小限に抑えるように設定された閾値では、「高リスク」と見なされる個人は、リスク閾値を下回る患者よりも3〜36か月以内に膵臓がんを発症する可能性が25倍高いことがわかりました。対照的に、前癌疾患イベントのシーケンスを考慮に入れていないモデルでは、対応する閾値を超える患者のリスクが大幅に低下しました。

研究者たちはさらに、マスジェネラル・ブリガム・ヘルスケアシステム(Mass General Brigham Health Care System)のEMR(電子医療記録:Electronic Medical Recordの略)を使用してデンマークの調査結果を検証しました。異なる医療システム間の医療と記録管理の慣行の違いにより、モデルを新しいデータセットで再トレーニングする必要がありました。モデルを再トレーニングすると、モデルは同等の精度で実行されました。

研究者らは、特定の臨床的特徴および膵臓がんの発生との有意な関連を発見しました。たとえば、糖尿病、膵臓および胆道の病気、胃潰瘍などの診断は、膵臓がんのリスクの増加と関連していました。この知識は、場合によっては従来のリスク層別化を改善する可能性がありますが、AIツールの利点は、患者の病歴のコンテキストでリスク要因に関する情報を統合することです。この研究が臨床試験で評価されると、膵臓がんのリスクが高い患者を特定できるようになることが期待されています。これは、リスクの高い患者を予防と早期発見のためのスクリーニングの強化を中心としたプログラムに採用するのに役立つ可能性があります。

 

以上

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Reference:

https://www.aacr.org/meeting/aacr-annual-meeting-2022/program/

https://aacrjournals.org/cancerres/article/80/22_Supplement/IA-10/645568/Abstract-IA-10-Overcoming-the-seven-deadly

https://letswinpc.org/promising-science/2022/04/27/2022-aacr-annual-meeting-research-update/

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