まずはご自分のがんについて知ることが大切です。

                          

(改訂:2018年4月)

 

■すい臓がんの種類
 すい臓には消化液をつくる腺房、膵液を運ぶ膵管、インスリンなどのホルモンをつくる内分泌腺などがあります。消化液をつくる腺房細胞から発生する「腺房細胞がん」、膵管から起きる「膵腺がん」、内分泌細胞から発生する「膵神経内分泌腫瘍」など、「すい臓のがん」といわれる腫瘍は20種類ちかくあります。いわゆる「すい臓がん」は膵管から発生します。このタイプが一番多く、発見が難しいために、見つかったときには進行していることが多いのが特長です。種類によっては進行がゆるやかなものもあり、長期生存が可能なものもあります。例えば、スティーブジョブズ氏のがんは膵神経内分泌腫瘍(pNET)という、ホルモンを産生する細胞ががんになるもので、早い段階で見つけて切除すれば完治できる可能性があります。

 

■すい臓がんの発がんモデル

 膵がんはいくつかの重要な遺伝子変異が起こる段階を踏みながら発生すると言われています。すい臓がんの多段階発がんモデルです。正常な膵管の上皮細胞は、KRAS、TP53、CDKN2、SMAD4などの遺伝子変異が積み上がり、一連の組織学的に定義された前駆体(パ二ンPanIN)を介して、浸潤がんへと左から右へと進行するといわれています。 KRAS遺伝子の変異は、早い段階に起こり、中間段階ではCDKN2(P16)遺伝子が不活性化し、TP53、SMAD4(DPC4)の不活性化は比較的遅く起こると言われています。がん抑制遺伝子であるSMAD4に変異がない患者は、変異のある患者より予後がよくなるとの報告もあります。(Ref1)

PDAC Progression Model

 

■すい臓がんのゲノム解析(Know Your Tumor????)

 パンキャンでは2015年よりすい臓がん患者の検体を集めて遺伝子解析をするバイオバンク事業(Know Your Tumor????)を進めてきました。2018年現在、1000検体以上が集まっており、遺伝子解析された結果も米国臨床腫瘍学会(ASCO2016)において発表されました。多くのすい臓がん患者には共通する4つの遺伝子変異(KRAS, TP53, CDKN2,SMAD4)がわかりましたが、それらの遺伝子変異に対して有効な治療法は残念ながらいまだに開発されていません。

 

 

■すい臓がんのゲノム医療・プレシジョンメディシン

すい臓がんには上記の4種類の遺伝子変異の他に多様な遺伝子変異がみられます。そのうち、48%の遺伝子変異には治療薬が存在することがわかりました。例えば、ARID1A/ARID2にはmTOR阻害剤、BRCA2にはPARP阻害剤などです。米国では、ゲノム解析の報告書に記載されている承認済分子標的薬、あるいは適応外薬(オフレ―ベル)を使用した治療、あるいはそれらの医薬品を使った治験に参加する患者が増えてきています。

 

PDAC Common genomic alterrations

 

日本では国立がん研究センターの「NCCオンコパネル」に代表されるような遺伝子パネル検査の一般的な利用がまだ始まっていないため、すい臓がん患者は米国パンキャン本部が進めているようなパネル検査の報告書に触れる機会がまだありません。厚生労働省では、プレシジョンメディシンを早期に国内で実現するために準備を進めていますので、まずはがんゲノム医療中核拠点病院において開始される予定です。以下の医療機関が「がんゲノム医療中核拠点病院」として指定されました。指定期間は平成30年4月1日から平成32年3月31日までの2年間とされています。

 

「がんゲノム医療中核拠点病院」
  1.北海道大学病院
  2.東北大学病院
  3.国立がん研究センター東病院
  4.慶應義塾大学病院
  5.東京大学医学部附属病院
  6.国立がん研究センター中央病院
  7.名古屋大学医学部附属病院
  8.京都大学医学部附属病院
  9.大阪大学医学部附属病院
 10.岡山大学病院
 11.九州大学病院

 

 

■専門医にかかることが重要

 すい臓がんに罹る人は年間約40,000人といわれています。すい臓はからだの奥深くにあるため、診断も治療も簡単ではないため、専門医にかかる必要があります。特に難易度が高いすい臓がんの切除が受けられる方は、すい臓がんの手術症例が年間30例以上ある病院、「ハイボリュームセンター」と呼ばれる施設で手術を受けることが重要です。日本肝胆膵外科学会では、高度技能医のいる病院で手術することを奨励しています。

また、最近は抗がん剤の種類も増えてきており、ステージ4と診断された患者でも、抗がん剤治療を続けることで手術適応となり、コンバージョン手術を受けてお元気にされている患者もでてきました。

 また、副作用を抑えて生活の質(QOL)を高め、長い間、化学療法をつづけることを可能としてくれる臨床腫瘍内科の先生に診てもらうことをお勧めします。日本臨床腫瘍学会では、がん薬物療法専門医のリストを公表しています。また、そのようながん薬物療法の認定研修施設も公表しています。http://www.jsmo.or.jp/system/pdf/sisetsu.pdf


 昔は、「お任せしますので、どうぞよろしく」というタイプの医師と患者の対話が多かったと思いますが、最近は病状から治療方針まで詳しく説明し、インフォー ムドコンセントを通して患者さんの同意を求める医師が多くなりました。従って、患者・ご家族も医師にすべてをおまかせした「患者不在」の治療をすすめても らうのではなく、病歴、症状、検査結果、診断結果が記録されたカルテをコピーしてもらい、記録を自らチェックしながら、病期・ステージ、さらに治療方針の内容について記録をつけながら、治療に前向きにのぞむことが大切です。

■すい臓がんの生存率

 すべてのがんの5年生存率は6割を超えました。がん患者の半分以上の方が5年以上生存できるようになってきました。しかし、過去40年間、すい臓がんの5年生存率は一桁台のままです。転移したがんでも増殖を抑えることができるような強力な治療法を必要としている、アンメットニーズの一番高いがんです。しかし、近年治療法を組み合わせた新しい治療法が開発され、徐々にすい臓がんの生存率に改善に兆しがみえてきました。 米国の10年生存率のデータは、抗がん剤の選択肢もほとんどなかった10年前の古い治療法を受けた患者のデータによることから過去40年間あまり改善が見られません。しかし、米国の5年生存率のデータを見ると、2015年以降は7%、2016年は8%、2017年は9%と確実に上昇傾向が続いています。

 日本の患者の生存率は欧州などの諸外国よりも高く、米国とほぼ同等というデータが国立がん研究センターによって発表されました。

 パンキャンでは2020年までにすい臓がんの5年生存率を倍増することを目標に、大勢の方のご寄付、ご支援に支えられながら「早期発見のツール開発」と「転移がんを抑える新治療法開発」に関する研究支援活動を続けています。

■パルズ電話相談センター(PALS)

 パルズ(PALS)とは、膵がん患者とそのご家族が必要としている情報を提供する、あるいはご一緒に探すというパンキャンが運営する「リエゾンサービス(Patient And Liaison Service)」の略です。ホテルのコンシェルジェのようなサービスです。膵がんと診断されたら、ひとりでお悩みになるのではなく、お気軽にパンキャンのパルズ(PALS) までご相談ください。 ぜひ一度パンキャンに電話してみてください。

btn-contact-pals-associate-Jpn

 

Reference1: AACR Clinical Cancer Research:SMAD4/DPC4 and Pancreatic Cancer Survival
Commentary re: M. Tascilar et al., The SMAD4 Protein and Prognosis of Pancreatic Ductal Adenocarcinoma. Clin. Cancer Res., 7: 4115–4121, 2001. Fang Liu

 

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