PanCAN印象記
古川徹
はじめに
2007年8月2-5日、米国カリフォルニア州La JollaにおいてPanCAN主催でSummit on Pancreatic Cancerが開かれた。私は九州大学の大内田博士、日経BP社小崎氏とともに日本より参加した。研究面は大内田博士のレポートに詳しく記載されているので私は主に全体的な印象を記載してみたい。
米・欧・日のトップレベルの研究者の集い
会議の目的は、難治がんであるすい臓がんの征圧を目指し、今後5年間に重点的に進めるべき研究は何かを明らかにすることであった。そのため、米・欧・日か らトップレベルの研究者が集められ、La Jollaのロッジに3日間缶詰にされて集中的に討議する、という形で行われた。集まったのは主として基礎医学方面のまさにトップレベルの研究者たちであ り、PanCANがいかに基礎医学研究に深くdevote(貢献)しているか、裏を返せば、すい臓がんを制圧するカギは基礎医学研究にあることを PanCANがいかに深く認識しているか、そして、PanCANが最先端の研究にいかに密接に関与しているかをあらわしているものといえ、まさに壮観で あった。
特筆すべきはすい臓がん研究者のみならず、それ以外、すなわち、すい臓がん研究に直接関与していない研究者も多数参加していたことで、これは、異分野の フィールドのアイデアを取り入れてすい臓がん研究を進展させようとする目論見のもとに集められたものであった。これら異分野研究者には地元La Jollaの世界的研究施設として知られるSalk Instituteのメンバーが多く、今年のアメリカ癌学会(American Association for Cancer Research)で会長を務めたDr. Geoffrey Wahlもその一人であった。
熱き思い、熱い討論
はじめにPanCAN代表であるMs. Julie M. Fleshmanのあいさつがあり、”This is a dream of PanCAN.”という言葉で、この会議がどれほどPanCANにとって重要なものと考えられているかが示された。続いてPanCAN理事長のMr. Jason Kuhnの言葉があり、父親がすい臓がんで亡くなった時の無力感がPanCANに係るきっかけとなり、同様の思いを持つ人々のためにPanCANをリード する立場に至ったことが語られた。また、自身のビジネスの経験から、医学研究は個々に分割された零細企業のようなもので非常に非効率的であり、この状況を 打開するために企業合併の様な研究者同士の連合が必要であることが示され、また、投資効率の考え方を示して、必要なところに資本を効率的に投下すべきとい う考えが示された。その内には自分が感じた悔しい思いは二度と繰り返さない、すい臓がんを何としても征圧するという気迫が感じられた。
研究発表、討論の内容については大内田博士のレポートに詳しいが、全体として印象的だったのは、討論が至極活発であり、思ったことは何でも意見するという 非常にフランクで実質的な雰囲気であった。日本の研究会等ではいわゆる大御所が控えていて、その人の意見を皆で聞くということが往々にしてあるがそのよう なことはみじんもなく、皆が何でも言い合い、いろいろな意見を吸収して建設的に討論を進めていくという、まさにPanCANが意図した姿がそこにあった。 まったく正反対の意見が臆することなく語られ、それに対してなぜそう考えられるのか、その矛盾を解決するためにはどのようにすればよいのか皆で真摯に考え るという、真にクリエーテイブな雰囲気がそこにあった。
PanCANの願い
今回の会議で、すい臓がん征圧に向けての具体的戦略がいくつか明らかになった。会議の結果は白書としてまとめられる予定であり、それがすい臓がん研究の今 後の方向性を示す重要なものとなる。その白書はわれわれ研究者ががん患者と共に病気と闘っていく道しるべとなり、まさにPanCANの希望、HOPEが凝 縮したものとなるはずである。